2016年12月21日水曜日

あれから10年

久しぶりに投稿します。
もう歳なので、昔のことはどんどん忘れていってしまいます。
備忘録として書いてきます。

まず、2004年に経営破綻した、Vestaxが復活しました。
http://www.stpvestax.com/

創業者の椎野さんが、立ち上げたそうです。
なんでも、2002年から椎野氏はVestaxの経営から離れ、その後
行き過ぎた商業主義により製品力が落ち、倒産に至ったと述懐して
おります。
確かに、V社はPDT-6000なる恐ろしくも素晴らしいターンテーブル
を作成したり、アイソレータはDJプレイを変革するほどのエポック
メイカーでした。
が、しかしその後市場に投入されたアナログDJミキサーはパッとせず、
私は欲しいと思ったことは一度もありませんでした。
Vの音と形容されるパワフルな出音は、裏を返せば劣化した音にも
聞こえてしまい、P社の製品に大きく離されていってしまいました。

恐らく、椎野氏もここら辺の製品に関して苦言を呈しているのでは
ないでしょうか。

しかし、その後デジタル時代の登場により、PCDJコントローラーでは、
安価でコンパクトな良い製品を多く市場投入したと思います。
実際、この手の製品は欲しいと思いましたし、製品を安価に抑えようと
した努力の副産物なのか、すっきりとした外観は好感をもてるもので
した。

椎野氏は、このデジタル製品の到来をどのように見ておられたのでしょ
うか、恐らく完全な蚊帳の外だったと思います。
これは、経営的な状況だけでなく、デジタル製品の開発に関してもです。

現在(2016年12月)、新生Vestaxは、STPVestaxとして蘇り、
フラッグシップミキサー「鳳凰」を完成させようとしております。

私は、その鳳凰を見て「おー、すごい!」と思うこと半分、もう半分は
首を傾げてしまいました。
技術力を誇示し、新生Vestaxを祈念する製品という位置付けなのだろう
と思いますが、はたして現在において誰が欲しがるのでしょうか。
いや、数人は欲しいと思う人はいるかと思いますが....

椎野氏は行き過ぎた商業主義に対して警鐘を鳴らしましたが、商売の基本
は売れるものを作り、お金に変えることだと思います。

かつて、Urei1620を在庫していたサウンドディスカバリーはまだありますか?
alphamusiqueのミキサーはDMRに展示していましたが、あれ売れましたか?

ディスクリートでミキサー作るって、だれが求めてるのでしょうか。
それよりも、オペアンプ使ってながらも、誰もが褒めてくれる製品を作った方が
ユーザーの為になるし、商売としても美味しいのではないでしょうか。

椎野氏が、かつてのV社の様な輝きをSTPVestaxにもたらすことができる
唯一の方法があるとすれば、エンドユーザー(現代のDJ達)の声を真摯に
聞いて、製品開発をすることだと思います。

「私の交友録」が、V社を引き継いだ経営陣との絶対の違いを物語っているじゃ
ないですか。
http://www.paco1977.com/?cat=12

新生V社、応援してます。
だって、私こんなことしてたんですから。。
http://subwaylove.blogspot.jp/2011/04/blog-post_12.html
ディスクリートミキサーだって、本当は大好きですから。
http://subwaylove.blogspot.jp/2013/04/blog-post_25.html

2015年4月13日月曜日

パラダイムの魔力

ジョエル・バーカーの「パラダイムの魔力」を読みました。
パラダイムシフトという言葉が、以前に流行語となり、報道番組のコメンテーター
などがやたらと用いていたので、耳に残っている方も多いかと思います。
イノベーションが最近の流行語のようですが、モノに起こるのか、コトにおこるか
の違いだけで、この二つは同意語のような関係性です。
これだけ長い間、変化・変革の意味合いを持つ言葉が叫ばれているのには、何か
理由がありそうです。
分かりやすい構造としては、「アップル vs 日本の電子機器メーカー」や、「航空
会社 vs LCC」などがあり、既存の枠組みをぶっ壊して新規に参入してくるアウト
サイダー達の成功がこれらの言葉を輝かせているような気がします。

日本にも、「視点を変えて見てみろ」などの言葉があり、パラダイムと同義の考え
かたはありました。トヨタ生産方式の生みの親、大野氏も同様の考え方の持ち主
でした。

さて、この「パラダイム」、とても重要な概念です。
私ごとで恐縮ですが、このパラダイムをぶっ壊すことで、人生の幅が広がります。
オーディオ製作の趣味は、このパラダイムを乗り越えたもので、最近は手芸へと
広がりを見せております。

バーカーは、見えないものを見えるようにしてくると表現しており、パラダイムの
変化はいつでも、どこでも起こりうるのです。

最近のパラダイムの変化を一つ紹介します。

家族旅行でLCCを活用すべく、成田空港へのアクセスは電車を考えておりました。
当然ながら空港直結の駐車場は高く、また外部の安い駐車場は早朝には営業して
いないことから、最も安く上がるアクセス方法は電車です。(疑問の余地はあり
ません。)
因みに、空港直結の駐車場は2日間の駐車で4,200円ほどかかります。高い!!

しかし、私の利用する北総線は、片道950円かかり、夫婦の往復にて3,800円-も
かかります。
ちょっとしたことでパラダイムの変化が訪れます。
子供を連れて、早朝の電車を乗り継ぐことを考えれば、自動車で乗り付けること
のメリットは計り知れず、金額も決して高くないのです。

北総線という相対比較が出現したことで、直結駐車場が高いと感じるパラダイム
は崩れ去りました。

見方を変えること、それが解決する高次の問題、次のパラダイムの出現など、
バーカーの著作は刺激で満載でした。良書です。

手芸の楽しみ

手芸といえば、女性のものと相場は決まっています。
手芸店に行っても、男性はマイノリティーで、居場所に困るくらいです。

しかし、やってみると超楽しい!!
古来より、人が生きて行く上で、「衣食住」は欠かせないものと言われ、
食は趣味として男性が行うようになってまいりました。住も、DIYの延長
として楽しまれておりますが、衣は依然として女子の領域を出ません。

そんな中、嶋崎隆一郎氏の「ミリタリーウェアの本」と出会い、手芸趣味
が開花したのです。

布選びから始まり、裁断、縫製、そして着衣と全てにおいて楽しく、どうして
これを男性は趣味として選ばないのか不思議でないくらいです。

私が作ったのは、NATOコートと、M-51パーカーですが、パーツが多く
敬遠されがちでもありますが、ミリタリーウェアは、パッカリングがOKと
されており、縫製の具器用さや、多少のやり直しも抱擁してくれる奥深さ
があります。

これから梅雨時を迎えます。インドアの趣味としてさらなる進化を迎えるべく、
日々勉強です。

2014年12月28日日曜日

キルティングコート

年末は、ミシンの前に座りチクチクと裁縫。
C&Sの型紙と、ソレイユから買った生地で、出来上がりは上々
だったのですが、妻に試着させたら肩周りがきつとのこと。。

妻が喜んで着ている姿をモチベーションにしていただけに、
ショック。

ボタンを打つ前に、娘用にほどくか悩み中。


2014年9月17日水曜日

自分でわが家を作る本。 を読んで

自分でわが家を作る本。

この本を一読して、「出会うべくして、出会った書籍」であると、天啓
に打たれた感じがしました。

自分で深く考え、何かを成す。
人が生きる上で当たり前に行なってきた、「生きる知恵=考えること」
について考えさせられる内容でした。

この「考える」こと、実は相当に脳へのストレス(良い意味での負荷し
かないのだけど...)があり、できれば他人にやってもらいたいことの一つ
ではないでしょうか。これに、肉体的負荷が加わるとなると更に増強
されます。

私の父の世代までは、作業小屋程度の棟上げは集落の男衆が出向き手伝っ
ていたと聞きました。
どの様に継手が組まれ、最小人数で施工する為の知恵は、集落の共有知
として蓄積されていたとのことです。

そう言えば、ロープの自在結びなど簡単にやってのける父を見て、「おお、
凄い!! バイク屋みたいだ!!」などと思ったこともありましたが、生きる
為に誰もが身につける知識が薄れつつある状況もまた、垣間みたのでした。

社会の労働環境が分業化され、専門業としてそれぞれが効率化したことは
素晴らしいことです。
スカイツリーから眼下に望む光景は、この効率化の大きな流れを俯瞰する
体験です。

しかし、専門分化された社会において、大きな弊害もあります。

「これは出来ない...」と、何もせず匙を投げる状況です。
効率化を度返しすれば、出来ないこと等ないはずですが(だって、結局人
がやってることでしょ?)考えることを放棄した現代人は、「誰かがやる
こと」と、全てにおいて考えがちです。

食品偽装や姉歯問題にせよ、私達がブラックボックス化してしまった状況に
おいて、見えづらい影の部分を上手く操られてしまった結果なのかもしれま
せん。

H・ガードナーの理論を持ち出すべくも無く、人には得意不得意があります。
自分より優れた人に仕事をしてもらい、報酬を払うことは理にかなっており
ますし、全く否定もしません。
どちらかと言えば、私も同様な人間です。

「家を建てること」、そんなことは到底個人では無理であると誰もが考える
ことでしょう。
私だって、いつかは理想の家を建てたい(設計士や大工さんに)と思って、
あくせく働いております。(今のままだとまぁ、無理でしょうが...)

それを自分で建てる!、しかも「そんなに難しいことではないよ!!」と本書
では説明し、実際にそれを実践してみせたのです。

人生において最も大きな壁は「固定概念」であると定義すると、この最も大き
な壁が崩れ去った瞬間でした。

読後の感想は、「いやいや、普通に建てられるじゃん!!」。

ここで、冒頭の「出会うべくして、出会った書籍」の天啓に打たれるのです。

誰もがこの感覚に出会えるわけではないかと思いますが、私の性癖からすれば
至極真っ当、オーディオ作ったり、木工したりするなら、家だって建てられる
のです。

正直、本当に家を建てるなら、この本では役不足です。
木造軸組工法をしっかりと学ぶ必要がありますが、「考えること」の扉を本書で
開き、「考えられる」という次のステップに移った私には難しいことではあり
ません。

人生を今以上に楽しむには、「固定概念」をいくつ乗越えることができるか、
に尽きるのではないでしょうか。

2014年8月21日木曜日

一級整備士とは何か?


一級整備士とは何をする人なのか....

昔整備士であった私からすると、二級が最上級であり、二級がエンジンやシャシ
などの重整備を行い、二級が最前線の先頭でした。
そこに突如一級という資格が表れたのです。
(運輸省時代から一級整備士の話が....等という未確認情報もあったりして、どうし
て今頃?今更??という感は私にもありました。)

昨今、と言っても10年以上前の話ですが、整備士の地位向上について大きな動きが
ありました。
2001年に一級整備士の資格が新設され、実務経験をつんだ精鋭達の狭き門
として登場したのです。

一級整備士が新設されて、数年の一般的な整備士達の反応は大方懐疑的で、訝しげな
目で見ておりました。

一級整備士の目的は、以下リンクにありますが、簡単に言えば「高度な電子
制御に対応できる整備士の育生」にあるかと思います。
<http://www4.jaspa.or.jp/jaspahp/user/mechanic/1st_answer.html#ans01>

それまでの自動車における電気系統は、バッテリー電圧と同じ12Vが車内
に張り巡らされており、根気さえあれば大概の系統を追うことができました。
この時、故障診断ツールとしてデジタルマルチテスターが活躍することは言うまで
もありません。

しかし、昨今の自動車は、ノードラインで各モジュールがネットワークで接続
され、一般的に5Vで制御されるパルス信号が飛び交うようになりました。

簡単に言うと、ECU(CPU)以外の小さなサテライトコンピュータが、メーターや
ステアリング、トランスミッションそれぞれに付いており、それぞれ固有の情報
は絶えずECUと通信しております。
「ネットワーク」化された接続ともなると、サテライトコンピュータ同士で通信系
等を持つ自動車も少なくないと思います。

この場合、デジタルマルチテスターで診断できる項目は1/3程度で、それ以外はテス
ターの数値がフラフラする良く解らない信号です。なので、専用テスターが必要
となります。(Ferrari SD2/3 はA/D変換機能を持つ、アナログとデジタル信号の
両方を扱うインターフェースでした。←この時、フェラーリが大きくモダン化された
時期と言える。)

「そんなに大きく変わってるかな?今も昔も自動車用診断テスターがあって、
メモリー診断やデータ診断できたじゃん??」
と言う人は、深い部分を突いていると思います。

アナログな抵抗値をA/Dコンバートしてデジタル処理....などという蘊蓄は飛び
越して、自動車整備の実際を見てみると....

そうです、診断方法はそう変わりません。
個別にセンサー情報を取得したり、Gセンサー(こんなもんGTRとか特殊な車にしか
付いてなかったからな~)にアクセスしたりと、とても便利ですが一般診断モードは、
「ちょっとバカでも使える」ようになっております。その為のマニュアルもしっかり
と用意されております。

結論から言うと一級整備士とは、見えづらい電気信号の不具合について、分かりやす
く説明できる整備士であると言えるのではないでしょうか。

故障の症状がる→推論する(テスタ)→何故そのようになるのか推論する(ヒト)→
故障箇所を推定する(ヒト)→カプラを外したり、その他の外部的要因を与え故障
箇所を確定する(ヒト)→故障箇所を交換する(ヒト)

というロジカルなフローの間には、デジタル信号という見えない信号が介在しており、
見積もりや修理を実行するにあたっては、これらを的確に説明できることが必要と
なります。

ですから、一級整備士は講習でオシロスコープを用いた実習を行なうのです。
オシロスコープを整備の実際で使えとは言ってないのです。(多分...)

(陰謀的な側面から...電気自動車の普及にあたり、バッテリーの交換は数年おきに
必ず起こる。またそのリサイクル費用も顧客負担を強いる。その最前線で顧客を
説得する為に生まれたのが一級整備士だとか!?)

正規輸入代理店の息のかかったFerrariのサービス工場に、クダラナイ テストを受け
るようにとお達しがありました。

なんでクダラナイかと言うと、オシロスコープのトリガとは云々・・・なんて問題が
いくつもあったからです。

そうじゃないだろ!!オシロなんてツールだし、オシロで測定する情報がどんなも
んかを知っていることが重要だろ!!とツッコミを入れたくなりました。

まぁ、何というかそのテストは不合格でしたけどね....(爆)

「エアバックのカプラ端子には金メッキが使われている理由を述べよ」という問題に
色々と述べたのですが、なんとバツでした。
答えを知りたかったのですが、輸入元は答えを公開しませんでした。

2014年8月11日月曜日

オープンな場には、知と人が集まる

旧長野県知事の田中康夫氏は、知事室を1階に設置し、かつガラス張りに
しました。
透明性を確保する為であったとされております。
まぁ、当時の庁舎内は、相当に透明でなかったのでしょう...

さて、本題に移ります。
飲食店や製造業において、「企業秘密」なる言葉を良く耳にします。
しかし、一方で技術をどんどんオープンに公開していく方々も存在します。
生き残る技術としての「秘密」と、生き残る技術としての「オープン」、非常に
興味深い事例です。

私は「オープン」派を支持します。というか、私自身がオープンなのかと思います
が...

日本の得意芸の製造業や、繊細な味付け、おもてなしを実践する飲食業、その本質
は決して一朝一夕でまね出来るものではありません。

「企業秘密」と称するものは、意外に秘密でもなんでも無いかもしれません。
その秘密を公開することで、利益が脅かされるとか、企業活動に支障を来すのなら
ば、ビジネスモデル事体が脆弱であり、別に考える部分が大いにあります。

莫大な研究開発費を投じて、市場に先んじて技術や製品を投入するビジネスモデル
の場合は、秘密の管理はとても重要で、上記の記述には適合しないわけですが、
最近では故意的なリークを用いて、市場操作を行なうこともチラホラ....

まとめると、職人によるものつくりやサービスにおいては、秘密として非公開に
するよりも、公開した方が何かとメリットがあるように感じます。

議論における「知の刺激」のように、誰かのアイデアに触発されて、更に良いアイ
デアが生まれて行く連鎖のように、オープンな場には、更に成長すべき情報やアイ
デアが集まってくるようです。

例えば、星のリゾートの社員教育に関する書籍「星野リゾートの教科書」は、おし
げも無く、従業員が従うべき考え方を公開しているし、カスタムナイフ
suzuki knife works」では、カスタムナイフの制作過程や技術をブログでどんどん
公開しています。

両者の共通点は、コモディティ化を脱して、強い経営体質を作り上げている点でしょう。